ブラジル中央のボアビスタは、首都ブラジリアから1000キロ以上離れている場所。
そこに生息するサル「フサオマキザル」は石を運ぶために直立歩行し、その石で固いヤシの実を割って、エサを得ている。
フサオマキザルは頭からお尻まで40cmほど。
それまで、石を使うのは人とチンパンジーだけと考えられていた。
人間とチンパンジーが別れたのは約700万年前。そして、サルと人間が別れたは3500万年前。
我々人類の大きな特徴である直立2足歩行。しかし、それがどのように始まったのかは謎に包まれてきた。人類進化の謎。
道具を使うフサオマキザルの行動は、その起源を探るヒントを与えてくれるかもしれない。
2004年12月、世界的な科学雑誌「AMERICAN JOURNAL OF PRIMATOLOGY」で、南米のある場所に住むサルが石を使って椰子の実を割るという論文が発表され世界が驚いた。
取材班がフサオマキザルの住んでいる場所に近づくと、ボスが崖から石を落として威嚇する。その姿はまるで人間のよう。
椰子の実は殻が固く、木にたたきつけるくらいでは割れない。
椰子の実と地面に転がっている石を両手で持ち、2足歩行しながら地面に横たわっている大木の所までいき、椰子の実を大木の上に置き、両手で石を持ち上げて、椰子の実に向かって振り落とし、椰子の実の固い殻を割ろうとする。
これこそが、世界が驚いた石を道具に使うフサオマキザルの行動。
この姿はまるで人間のよう。
椰子の実が割れると、木の上に登り椰子の実の中のナッツを食べる。
椰子の実の硬さはクルミの20倍以上。
ボスが椰子の実を割ると、別のサルもボスと同じように椰子の実を石を使って割り始める。
中には助走をつけて椰子の実を割ろうとするフサオマキザルもいる。
フサオマキザルが石を使って椰子の実を割る行動は、これまで普通のサルにはできないと考えられていたこと。
実を割るためには、実と台と石の3つを上手く使いこなされなければいけない。
2つではなく、3つのものを組み合わせるという行為は、高い知能が必要になる。
最近、他のサルでも報告されたが、フサオマキザルが発見されるまではチンパンジーにしかできないと考えられていた。
進化の歴史を紐解くと、人間とチンパンジーの祖先が別れたのは約700万年前とされている。一方、フサオマキザルはそれよりはるか昔、3500万年前に別れた。
知能が高いとされる類人類とは違う地域で、異なる進化を遂げてきたフサオマキザル。
そんな普通のサルが類人類と同じように高度なワザを使いこなしていることが、サルの常識を覆す大発見として世界の科学者が驚いた。
フサオマキザルの行動を観察しはじめた博士たちが、まず不思議に思ったのは、道具の石をどこから持ってきているのかということ。
固くて丸い石は森の中ではほとんど見つからないから。森の中では本当に珍しい石。
その石は椰子の実を割る場所から1キロほど離れた崖の頂上にたくさんあった。
フサオマキザルは、この石が椰子の実を割るのに都合がいいことに気づいたに違いない。
ボアビスタのフサオマキザルは、実と台と石の3つ道具を組み合わせるだけでなく、必要な道具を遠くから運ぶという知恵も持っていた。
フサオマキザルとは一体どんなサルなのか?
フサオマキザルは南米に住む約80種類のサルの中で最も広い範囲に暮らしている。
その多くはアマゾンの熱帯雨林に済んでいる。
主食は果物と木の実。地面に降りることはめったにない。
フサオマキザルは手先が器用で賢く、南米のチンパンジーと呼ばれるほど。
フサオマキザルを訓練して、人間の手助けをさせようという取り組みがアメリカで行われている。
身体の不自由な人を助ける介助ザル。
車椅子に座った人が、「電気を付けて」と言いながらスイッチに赤いライトを照らすとそのスイッチをオンにしたり、「手を持ち上げて」と言うと2本の腕を使って一生懸命に人間の片腕を上に持ち上げようとする。
冷蔵庫に赤いライトを照らしてい「オープン」と言うと、冷蔵庫を開け中のものを持ってきてくれたり。
タオルで顔を拭いてくれたり。
短い言葉と光で指示を出し、介助を教え込む。
一通りの作業ができるまでに4年ほどかかる。
アメリカではすでに100匹以上が介助ザルとして活躍している。
このように、訓練をすれば高い能力を発揮できることは前から知られていた。
しかし、南米ブラジルの乾燥地帯には誰に教わることもなく道具を使う群れが存在していた。
ボアビスタのフサオマキザルは生まれながらにして椰子の実を割れるわけでない。
一体、どのようにして身につけていくのか?
実は、フサオマキザルは子どもに食べ物を与えることをしない。
大人のフサオマキザルは、子どもに実をあげないどころか、実を割るワザを教えることもない。
子供は、大人が実を割るワザをじっくりと観察し、自分で覚えなければならない。技は教わるものではなく、見て盗むもの。
フサオマキザルがいかに頭が良いとはいえ、簡単なことではない。若いフサオマキザルは最初は失敗ばかり。
成長して自分で石を運んだり、椰子の実を割ったりできるようになるまで、子供のフサオマキザルはわずかに実る木の実などを食べて、お腹を満たす。
エサでおびき寄せて、フサオマキザルの体重を計ってみると、ヤシの実が割れるサルはほとんどが体重2キロ以上だった。
さらに、道具に使う石と体重との関係が浮かび上がってきた。
今回測定したフサオマキザルは、体重が2.2キロで1.85キロの石を使っていた。
自分の体重の80%を超える重さの石で実を割っていることになる。とても力が強い。
これは60キロの人間でいえば、48キロの石に相当する重さ。
他のフサオマキザルたちも、体重の半分以上の重さの石を使っていた。
体重が2キロを超すのは、もうすぐ大人になる青年のサル。
毎日、思い道具を使うことは、筋肉を鍛え、強化する効果がある。
このことが、フサオマキザルの新たな可能性を引き出していると博士たちは考えはじめている。
我々人類の祖先は、約700万年前、類人猿と別れ進化したと考えられている。
その最大の特徴は直立二足歩行。脳の巨大化など重要な変化をもたらした。
しかし、化石などの証拠がほとんどなく、どのように始まったのか謎に包まれている。
人に最も近いチンパンジーは石を道具に使う例は知られているが、二本足で歩くことはめったにない。
一方、道具を使うフサオマキザルは、石を運ぶ時などに頻繁に立って歩き回る。
フサオマキザルがどのように二足歩行するようになったのか?そこに人類の直立歩行の起源を考えるヒントがあるかもしれない。
フサオマキザルが石を割る姿をデジタルビデオで撮影して、それをコンピューターに取り込み細かく動きを調べてみると、石を持ち上げる時にはじめに使っているのは太股の大きな筋肉。そして、次に腰と背中の筋肉、最後に肩と腕の筋肉を使っていた。
重い石を持ち上げる動きは、特に太股と背中の筋肉が重要な役割を果たしていることが分かった。
この身体の使い方は、人間が立って重い物を持ち上げる時の動きと非常によく似ている。
フサオマキザルが道具を使いヤシの実を割るという行動には、科学的に極めて新しい発見が詰まっている。
フサオマキザルは重い物を持ち上げ運ぶことで二足歩行できる身体を作るという驚くべきことをしていた。
それは、化石として発掘している人類の祖先とサルを比較し、進化の謎を解き明かしてくれるかもしれない。
【感想】
人類の進化は誰でも非常に興味を持っていることだと思います。
直立二足歩行のはじまりが、道具を使うフサオマキザルによって少しでも解明したら、非常にエキサイティングなことだと思います。
そもそも、我々人間が当たり前のようにやっている2足歩行。
これは、高度な知能を持った動物の行動なんですね。
そして、「2つではなく、3つのものを組み合わせるという行為が高い知能が必要になる」ということは盲点でした。
これを考えると、サッカーなどのスポーツも「自分の足」「サッカーボール」「地面」という3点を組み合わせた行為です。
スポーツをやるのは人間だけということを考えると、スポーツ自体が高い知能が必要になる行為なんですね。
人間にとっては当たり前のようにできることでも、他の動物には難しいことを、もう一度あらためて考え直してみたくなった映像でした。
やはり、NHKスペシャルは非常に勉強になりますね。
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