連日、株価の暴落が続くアメリカニューヨーク証券取引所。
各国政府は公的資金の注入や銀行の国有化など異例の対策を次々と打ち出している。
しかし、マーケットの不安はぬぐえない。
80年前の世界大恐慌の再来となるのか?
1929年、第一次大戦後の好景気で発生した金融バブルが崩壊。
ニューヨーク市場の株価が暴落し、世界は大恐慌に突入した。
アメリカの失業率は25%に達し、世界的な不況は4年間続いた。(世界大恐慌 1929〜1933年)
再び、アメリカから始まった今回の金融危機が、凄いスピードで世界を混乱に陥れている。
日本ではわずか1週間で日経平均株価が20%以上下落。
香港では損失を追った投資家達が「これは詐欺だ。俺の大事な金を今すぐ返せ」とデモを繰り返している。
実体経済への影響も出ている。
ヨーロッパではすでに従業員のリストラが相次いでいる。
経済学者はこう語る。
「金融システムへのダメージとしては大恐慌の時よりも今回の方が深刻です。」
金融危機の深さ、広さを示す指標の1つが株価。
2007年10月から2008年10月までの1年間では世界の株価は次のように半分前後に下落している。
アメリカ <ダウ平均>
14079 → 8451(40%下落)
日本 <日経平均>
17178 → 8276(52%下落)
インドネシア <JKSE>
2591 → 1452(44%下落)
ロシア <RTS>
2144 → 845(61%下落)
イギリス <FTSE>
6633 → 3931(41%下落)
リーマンブラザーズの経営破たん以降、株価の下落が加速している。
世界的に優良と思われていた企業が急速に経営難に陥るといった事態が起きている。
為替の変動も激しく円高が急速に進み、円相場は100円を突破。
今回の金融危機の大きな背景にあるのは、「実態経済」に比べて「金融資産」、つまり「投資マネー」が急拡大したことにある。
1990年には、実態経済は3100兆円、金融資産は5500兆円と、その差2400兆円だった。
それが、2007年には金融資産が大幅に拡大し、実態経済が6400兆円、金融資産は2京2000兆円と、金融資産が実態経済の約4倍弱と、まさに金融バブルと呼んでいい状態が起こっていた。
現在、この金融資産(投資マネー)が激しく売られ、金融資産が急速に収縮している。
未曾有の世界同時株安に発展した今回の金融危機。
不安を生み出している最大の要因は「信用収縮」。
信用収縮とは、巨額の損失を抱えた金融機関が、さらなる損失を恐れて企業などへの融資をためらっている状態。
銀行同士が資金を貸し借りする「短期金融市場」でさえも、互いの経営状態に疑心暗鬼を募らせる余り、資金の出してがほとんどいなくなってしまった。
世界を飲み込む信用収縮の要因は、アメリカのウォール街でこの10年間に爆発的に増加した「証券化商品」にある。
証券化商品の内容を詳しく記した目論見書は560ページにも及ぶ。
証券化商品とは、自動車・カード・住宅ローンなどを担保とした様々な債券を組み合わせて作られている。
組み合わせる目的は、損失のリスクを減らすため。

たとえば、焦げ付くリスクの高い、ある住宅ローンが債券があるとする。実際に貸し倒れが起きれば、価値が一気に失われるため、評価が「C(高リスク)」に設定される。
ところが、リスクが高い債券を複数組み合わせると、そのうちのいくつかが焦げ付いても、全体の価値が一気になくなることはない。すると、この証券化商品のリスクは「B(中リスク)」と設定される。
更にリスクを分散させるため、証券化商品同士を組み合わせて別の証券化商品が作られる。

こうしたプロセスが何度も繰り返され、証券化商品の階層の深い入れ子状態になり、リスクの所在すら分からない証券化商品が世界中に販売されていった。
証券化商品の中には「AAA(トリプルエー)」、つまり「最も安全だ」という評価が設定されたものもある。
2005年以降、サブプライムローンを組み込んだ証券化商品が増えていった。
当時、アメリカの住宅価格は年率10%を超える上昇を続けていた。
ローンの担保になっている住宅の価格が上がり続ける限り、サブプライムローンであっても焦げ付く危険は低いと考えられていた。
銀行はどんどん住宅ローンを貸し出すようになった。それを証券化して次から次へと証券化商品が販売された。
しかし、2006年秋、当然、住宅価格が下がりはじめた。その結果、サブプライムローンの焦げ付きが続出した。
そして、証券化商品があまりに複雑で、サブプライムローンがどこにどれだけ含まれているのか分からなくなってしまったという深刻な問題が浮かび上がった。
誰がどれくらいの損失を抱えているのか、今起きている信用収縮はこの疑心暗鬼によって引き起こされた。
信用収縮のもう1つの要因は、過剰なレバレッジ。
レバレッジとは、借り入れ金を使って、少ない元手から巨額の利益を得る手法のこと。
借り入れがない場合、元手が10億円なら10%の利益は1億円。
しかし、290億円を借り入れ、資金を300億円に増やすと、10%の利益は30億円に膨れあがる。
このように、自分の資金以外の他人の資金を使って、利益を最大化してことをレバレッジと言う。
ところが、このレバレッジは運用に失敗した場合には、損失を拡大させてしまうリスクもはらんでしる。
もし、損失が10%出れば、元手の3倍にもなる30億円を失うことになる。
ニューヨークのウォール街では、元手の30倍ものレバレッジという危険な賭けが当たり前のように行われていた。
ウォール街から始まった激しい信用収縮の衝撃は、ヨーロッパに波及した。
ヨーロッパの多くの金融機関が資金調達に苦しみ、証券化商品を扱ってこなかった銀行までも経営難に陥ってしまった。
全世界に燃え広がった信用収縮が記録的な株価暴落を引き起こし、実態経済にも襲いかかろうとしている。
今回の世界金融危機は、アメリカを中心とした世界経済の構図も要因の1つとしてあった。
1990年代半ば、アメリカは金融を国家経済の柱とする戦略を打ち出した。
金融の自由化を推し進め、世界から大量の投資を呼び込むことが狙いだった。
1999年には、証券会社に加え銀行や保険会社などが証券業務に参入できる「グラム・リーチ・ブライリー法」が制定され、証券化ビジネスが活性化した。
アメリカの中央銀行である「FRB(連邦準備制度理事会)」で理事を務めた人物は、「製造業からサービス業へと産業構造を発展させてきたアメリカが次に金融に力を入れるのはごく自然な流れだった」「金融へのシフトは典型的な経済発展のプロセスと言える。金融の進歩で新しい証券化商品が開発できるようになれば、長期的には非常に有意義だと考えていた。」と語った。
アメリカの金融による経済発展で最大の原動力になったものは、2003年以降に全米を覆った空前の住宅ブームだった。
「すべての人に持ち家を」という政策を掲げたブッシュ政権も住宅ブームを後押しした。
ブッシュ大統領は当時、「問題は白人の4分の3が家を所有しているのに対して、黒人やヒスパニックの人々は半分以下しか持っていないことだ」と語った。
住宅価格の上昇を背景に、これまで住宅を持つことができなかった人にも「サブプライムローン」という形でお金が貸し出された。
ウォール街の金融機関はそれを次々と証券化商品に組み込み、莫大な利益を上げた。
この時、急激な成長を遂げていた中国・インドなどの新興国やEU諸国も、アメリカの証券化商品への投資を拡大していた。
消費大国アメリカとの貿易で新興国やUE諸国に支払われたドルが、再びアメリカの金融市場へ投資されるというマネーの流れが確立された。
住宅ブームを後ろ盾に、アメリカの金融を中心とした世界経済の成長モデルができあがった。
このアメリカの金融を中心とした世界経済の成長モデルに疑問を投げかけていたのが、プリンストン大学のヒュン・ソン・シン教授。
・アメリカ1国に依存したこの成長モデルには巨大な落とし穴がある。
・問題はアメリカの金融を支えた住宅ブームの資金源のほとんどが海外の国々の貯蓄であった点。成長につれ、その貯蓄が膨らみすぎて世界経済の均衡が崩れる恐れがある。
・インドや中国などの新興国に蓄えられたマネーが、一斉にアメリカに流れ込んだ場合、住宅ブームが巨大なバブルとなり一気に崩壊する恐れがある。
ヒュン・ソン・シン教授は2005年のFRBの重鎮が集まるシンポジウムでこの考えを論文として発表したが、警告は聞き入れられなかった。
FRBは住宅価格の上昇を抑えようと、それまで低かった政策金利を引き上げた。
しかし、住宅関連の証券化商品に海外から流れ込むマネーは、金融政策では制御できない規模に達していた。
FRBで理事を務めた人物は、「FRBの金融政策が間違っていたとは思いません。アメリカには依然魅力的な金融商品があると考えた世界のマネーの流れが止まらなかったのです。巨額なマネーは住宅ブームという火に油を注ぐことになりました」と語る。
住宅バブルは破裂。巨額のマネーをアメリカに集中することで成り立っていた世界の成長モデルは、そのマネーの暴走によって崩れ去った。
アメリカという急進国を失い大混乱に陥っている世界経済。危機はいったいどこまで深まるのか?先行きは闇に包まれたままだ。
【感想】
途中でリーマンブラザーズのCEOのリチャード・ファルド氏が、議会で証言した映像が流れたのですが、そこでリチャード・ファルド氏が発した言葉が印象的でした。
「なぜ、サブプライムローンのような危険な商品に走ったのだ」
「あなた方は投資家に多大な損失を与えただけでなく、経済も壊してしまった」
と議会から批判されたリチャード・ファルド氏は次のように答えました。
「今から考えれば、ビジネスのあり方を見直すべきだったかもしれない。でも当時、そんあことをすれば、非合理的だと言われたことだろう」
今回の世界金融危機は、リスクを分散して証券化商品という玉手箱を作って販売した売り手側の責任はもちろん、効率的にお金を儲けることしか考えられなくなり、冷静な判断ができなくなってしまった投資家にも責任があると思います。
というか、もう誰にも止められない人間の欲望と言えるでしょう。まさに「音楽が鳴っている間はダンスは辞められない」状態。
人間は動物の中で最も知性が高いですが、反面では最もおろかな存在ともいえます。
失敗をしないと、痛い思いをしてからでないと理解できない動物です。。
戦争もそうですし、今回の金融危機もそうです。
痛い思いをして、多大な犠牲を出して、やっと方向展開ができる。
そう考えると、これからもっと深刻になるであろう地球温暖化にも同じことが当てはまると思ってしまいます。。
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