世界同時食糧危機「アメリカ頼みの"食"が破たんする」

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今、世界各国で食糧危機が襲っている。

エジプトでは今年、食糧の値上がりが暴動に発展。

中米のエルサルバドルでは、食糧危機は都市の中間層にも広がり、満足に食事がとれなくなっている。

日本でも乳製品など生活に欠かせない食品の値上げが相次いでいる。卵も値上がっている。

今、世界を襲うアメリカ発の金融危機。グローバル化とマネーの暴走が人々の暮らしを崩壊させようとしている。

その危うさをいち早く見せつけたものが「食糧」。

世界最大の穀物輸出国アメリカは、食糧でもグローバル化を進め、マネーを呼び込んでいた。

膨大な穀物を世界に売るアメリカの穀物メジャーは、世界的な穀物高騰で売り手の立場がますます強まり、今でも空前の利益を上げている。

穀物を欲しいだけ買える時代は終わり、お金を出せる者だけが買える時代になった。


なぜ、ここまで穀物が値上がりしたのか?

1つ目の原因は、中国の爆食とも言われる13億人の胃袋が、穀物を大量に飲み込み始めたこと。

2つ目の原因は、バイオエタノール。食べ物がだった穀物が燃料に大量に使われ始めた。

「このままでは穀物が足りなくなるのではないか?」この不安が投機マネーを呼び込んだ。

トウモロコシは一時、2年前の3倍にも値上がりした。

アメリカの穀物に頼っていた国が、今、次々と食糧危機に陥っている。


食糧危機は今の世界経済の危機に通じるものがある。

食糧危機と世界経済危機は「世界同時」で起きている、「グローバル」に起きているという点で同じ。

しかも、その危機の源が「アメリカ」だという点でも同じ。

アメリカが食糧を世界にどんどん輸出した結果、食糧がアメリカ発でグローバル化したために危機も世界に広がった。

さらに、小麦や大豆、トウモロコシといった穀物という食糧が、株や債券などと同じ金融商品として取引されるようになり、マネーの暴走によって穀物が大幅に値上がりし、我々の暮らしを脅かしている。

この点でも、食糧危機は金融危機に通じるところがある。

アメリカは金融だけでなく、食糧に関しても世界への大きな影響力を持っている。

アメリカは世界最大の穀物の輸出国。

アメリカの世界の輸出は、トウモロコシが50%以上、小麦が約30%と世界一。

この結果、世界が食糧をアメリカに頼ることになり、本来、自給自足が中心であったはずの食糧がグローバル化していった。

食糧危機が世界同時で一斉に起こった理由には、こういった背景がある。


2008年に食糧高騰によるデモや暴動は、下記の世界18カ国に及んだ。

メキシコ
エルサルバドル
ハイチ
アルゼンチン
フィリピン
インドネシア
バングラデシュ
エジプト
イエメン
モザンビーク
南アフリカ
コートジボアール
ガボン
カメルーン
ブルキナファソ
セネガル
モーリタニア
チュニジア

穀物の高騰は幅広い食糧の値上がりにつながって、食べ物を買えない人が世界中で増えた。

穀物の高騰が他の食品にまで影響している理由は、たとえば、トウモロコシは主食に使われるだけなく家畜のエサにも大量に使われているから。

牛肉を1kg作るには、エサとしてのトウモロコシが11kgも必要になる。

だから、穀物が高騰すると、パンや麺類だけでなく肉や乳製品なども幅広く値上がってしまう。


穀物高騰は世界中で貧しい人々の食を奪っていった。

人口7500万人のエジプトでは、家畜のエサになるトウモロコシの値上がりで、肉や卵の値段が跳ね上がった。

鶏肉は1年前の2倍、卵は3倍に。

今、市民は政府が価格を抑えて販売するパン売り場に殺到しているが、すぐに売り切れてしまって、全く足りない状態になっている。


食糧危機は、これまで飢餓とは無縁だった一部の中間層にも広がっている。

中米のエルサルバドルは、かつては食料を自給自足していたが、15年ほど前から米などの穀物の多くをアメリカからの安い輸入品に切り替えてきた。

食糧危機に陥ったエルサルバドルでは、米の値段は2倍になり、公務員であっても肉は月に1〜2回しか食べられなくなってしまった。

輸入に頼っていたエサが値上がりしたことで、多くの養鶏場はエサを買えなくなり、次々とニワトリを処分し、廃業に追い込まれている。この夏には一ヶ月で25万羽のニワトリが処分された。


エサとなる穀物は30年近く安いままだったが、ここ2年で急激に値上がりした。

なぜ、穀物は高くなったのか?

そこには、穀物を売りさばくために、どんどん消費させようというアメリカの戦略があった。

地球温暖化対策として注目されるバイオエタノールはトウモロコシから作る燃料。

トウモロコシは長年あまっていたため、2ドル前後の安値が続いていた。

収入が少ない農家は政府の補助金なしでは経営が成り立たなかった。

トウモロコシ普及協会の会長は次のように語る。

「トウモロコシが大量に余って、政府の補助金に頼る生活に農家はウンザリしています。エタノールが普及すれば、トウモロコシの価値が上がり農家に利益をもたらすのです。」

エタノールブームのきっかけを作ったのは実は農家だった。

アメリカのアイオワにあるバイオエタノール工場も、2004年に800人の農家が共同出資して作った。理由はトウモロコシのいい売り先を近くに作るため。

その一方で、農家の団体は政府に対し、エタノールの消費を増やすための働きかけも行ってきた。

農家の穀物メジャー「CHS」のロビイストは、エタノールを全米各地に運ぶパイプラインなどを整備しようと、議員や農務省を回っている。

このロビイストは「これは教育です。良い友人になって政府や議会が正しい判断ができるように情報を提供しているんです。」と語る。

国全体がエタノールの使用に大きく踏み出した2005年3月にも、「CHS」は議員たちに手紙を送った。

その手紙で「エタノールは農家の収入を上げることができ、政府も農家への補助金を減らせる」と訴えている。

2005年8月、アメリカは国全体のエタノールの使用料を2倍に増やす法律である「包括エネルギー法」を制定した。

この法律制定によって、エタノールブームに火がついた。

巨大資本も次々と参入し、全米で150を超える工場が建設された。

エタノールに使われるトウモロコシは、生産量の23%にまで達した。これがトウモロコシの価格高騰の要因の1つになっている。


「CHS」や農家の団体はもう1つの巨大市場の開拓にも取り組んできた。

その市場とは人口13億人の中国。

これまで中国はトウモロコシの輸出国だった。

1998年頃から、アメリカの農家の団体は、中国人が肉を多く食べるように西洋式の食事の普及を計ってきた。

肉の消費が増えれば、エサとなるトウモロコシの商品も増えると考えたから。

今、中国の都市部ではステーキハウスをよく見かけるようになった。牛肉の消費はこの20年で15倍に拡大した。

「CHS」などの穀物メジャーや農家が加盟する「アメリカ穀物協会」は、1983年に北京事務所を開設し、それ以来、中国という巨大市場の開拓に取り組んできた。

北京事務所代表は次のように語る。

「わたしたちは中国をトウモロコシの輸入国にするためにここにいるんです。中国経済が成長を続け、肉や卵、牛乳の消費がもっと増えれば、大量の穀物が必要になります。それをわたしたちアメリカが満たすのです。」

アメリカ穀物協会は、中国では馴染みのない濃厚な牛乳の普及を推し進めている。乳脂肪分が一般的な牛乳の1.5倍。その名も「Wonder Milk(驚異の牛乳)」。価格は他の牛乳の2倍もするが、都市部を中心に売上を急速に伸ばしている。

アメリカ穀物協会は、この「Wonder Milk(驚異の牛乳)」を作る牧場を全面的にバックアップしてきた。

中国の酪農は牧草をエサにするのが一般的だが、「Wonder Milk(驚異の牛乳)」を作る牧場では、大量のトウモロコシを食べさせることで、濃い牛乳を作っている。

中国ではトウモロコシの消費量が増え続け、2008年春には中国から日本などへのトウモロコシの輸出が実質的に停止した。

その結果、多くの国がアメリカのトウモロコシに一層頼るようになっていった。

アメリカ穀物協会の北京事務所代表は次のように語る。

「中国での穀物の消費を大幅に増やすことができて満足しています。あと2〜3年もすれば、中国国内でのエサは足りなくなり、輸入せざるを得なくなるでしょう。」

世界のトウモロコシの在庫は、中国など新興国の消費拡大、そしてエタノール生産の増加で2000年以降、大幅に減りました。

足りなくなれば値段が上がるので、この2年でトウモロコシを買う投資家が急増し、トウモロコシの価格をさらに押し上げることになった。


自ら工場を作り、エタノールブームに火をつけたアメリカの農家たち。価格が上がった今も新たな工場の建設を計画している。

農家たちは次のように語る。

「トウモロコシを前みたいな値段で売れないよな」
「ありえないよ」
「俺たちにはエタノールがあるんだ」
「ただ同然で売る時代は終わった」
「あんな時代が今も続いていたら、とても生きていけないよ」


アメリカはまさに自分自身で穀物が使われるルートを広げていった。

アメリカの農家が穀物を単に作るだけではなくて、農業団体や政府と一体となって自ら消費を作り出し、売り先を広げていった。

トウモロコシは、そもそもは食べ物や家畜のエサとして使われてきたが、それをバイオエタノールという燃料としても使われるようにした。

さらには、世界最大の人口を持つ中国にも食い込み、それだけでなく、中国人の食生活の西洋化を計り、肉や乳製品をどんどん消費する習慣作りまで取り組んでいった。

こうしたアメリカの取り組みによって、穀物の消費量が急速に増え、在庫が少なくなった。

これによって、「この先、穀物が足りなくなるのではないか」と見た投機マネーが穀物市場に流れ込んで、穀物の記録的な高騰に結びついた。


【感想】

私は今までは「世界から良いものを安い場所から仕入れればいい」と考えていましたが、今回の映像をみてこの考えが変わりました。

やはり、食糧自給率は高く保った方が、リスク回避になると感じました。

日本の食糧自給率は先進国で最低の40%だそうです。

半分以下です。

少なくとも、半分以上の食糧自給率を保ちたいところです。

外の環境が変わっても、食だけは確保ができるという状況を国レベルで作るべきだと思います。

それにしても、アメリカという国は良くも悪くもすごい国ですね。エタノールという次世代の燃料を作り、アジアの国の食生活の西洋化までして、トウモロコシの消費を増やすなんて。。

商売の上手い戦略的な国なんですよね、アメリカって。良くも悪くもですが。。

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