食糧争奪戦 〜輸入大国・日本の苦闘〜

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世界では安い食糧が簡単には入らない時代が始まっている。

きっかけは世界な穀物の値上げ。大豆や小麦、トウモロコシの値段が以前の3倍に達した。

その背後には、巨大な人口を抱える中国やインドの急成長がある。

数十億の食生活が豊かになり、世界の穀物生産が消費に追いつかなくなった。

そして、大量のトウモロコシを使うバイオ燃料の登場が事態をさらに悪化させる。

限られた食糧を各国が奪い合うという新たな時代に。

旧ソビエトのウクライナでは日本や欧米の企業が入り乱れ、農地の激しい獲得合戦が繰り広げられている。

世界中で始まった食糧争奪戦。

食料輸入大国である日本は、どうやって食べ物を確保するのか?

豆腐、みそ汁、湯葉、納豆、醤油といったお馴染みの食べ物が、将来、当たり前のようには食べられなくなるかもしれない。

なぜなら、これらの食べ物の材料は「大豆」だから。

日本は大豆の95%を輸入に頼っている。国内で自給できるのはほんのわずか。

そして、大豆は今回の世界同時食糧危機で手に入れるのが難しくなっている。


大豆が手に入りにくくなった原因の1つに、アメリカの変化がある。

日本の食品メーカー「ハナマルキ」はアメリカの農家と契約を結び、日本の味噌にあった大豆の生産をしてもらっていた。

ところが、農家が契約に応じなくなった。

なぜなら、ここ数年のバイオ燃料に使うトウモロコシが値上がりに応じて、大豆から儲けの大きいトウモロコシに切り替える農家が相次いでいるから。


世界では輸出に回る大豆が量が少なくなっている。

大豆の主な生産国はアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国で、この4カ国だけで世界の生産量の9割を占めている。

ところが、3分の1しか輸出には回っていない。その上、中国が大豆の輸入国になったことで、一気に品薄になってしまった。

必要な食糧を安定的に確保するためには、
・農地を増やす
・畑からの収穫量を増やす
の2つ。

「農地を増やす」といっても、もともと国土には限界があるので、世界中で各国が農地の獲得合戦を繰り広げている。

中でもウクライナは世界が注目している。

欧米の企業はウクライナの土地を確保するために、大企業が大金を手に農地の囲い込みにしのぎを削っているが、日本農家の参入は進んでいない。

確保した土地は現地のマフィアから守るために、自動操縦を持った警備員を配置している。

ウクライナの土地で生産した大豆は、日本のように人口が多いが自国で自給できない国や、UAE(ドバイ)のように自給できないがオイルマネーでお金を持っている国に輸出される。


世界の農地の獲得合戦は激しくなっているが、農地の拡大だけでは十分な食糧は確保できない。

というのも、国連の予測では、世界の農地の面積は2000年からの30年で8%の増加、これに対し、世界の食糧の需要は58%の増加となっている。


農地の拡大だけでは世界の食糧の需要に追いつかないので、「畑からの収穫量を増やす」ために、世界が注目している技術が「遺伝子組み換え」。

アメリカはかなり普及が進んでおり、トウモロコシの80%、大豆の92%が遺伝子組み換えとなっている。

ここ10年で人口が700万人が増え、経済成長が続く南アフリカでは、主食となっているトウモロコシに遺伝子組み換えが使われている。

遺伝子組み換えトウモロコシが導入されたのは7年前。増え続ける人口を養うため。今、トウモロコシ畑の6割を遺伝子組み換えが占めている。


南アフリカが導入した遺伝子組み換えの種を作ったのは、アメリカのセントルイスにある世界最大の種子メーカー「モンサント社」。

去年の売上は約1兆1000億円。世界18カ国で、大豆や菜種などの遺伝子組み換えの種を販売している。

主力商品は除草剤に強い品種。

雑草を枯らす除草剤は、時に作物まで枯らしてしまう。遺伝子組み換え技術はこの悩みを一気に解決した。

使われているのは、除草剤をかけても死なない性質を持つ、畑の土に住む「土壌菌」の一種。

この「土壌菌」の遺伝子の除草剤に強い部分を切り出して、トウモロコシの遺伝子に組み込むことで、除草剤をかけても枯れないトウモロコシができる。

モンサント社の社長は次のように語る。

「もし、世界の収穫量を倍に増やそうとするなら、従来の品種改良では無理です。遺伝子組み換え技術でしか実現できません。今の食糧不足は我々にとって大きなチャンスです。」


南アフリカでは、雨が少なく不作が続く南部の乾燥地帯で、遺伝子組み換えが豊かな実りをもたらすと期待されていたが、成果が上がっていない。

南部の農村のリーダーは次のように語る。

「遺伝子組み換えトウモロコシは、乾燥した土地ではうまく育たないのです。」

南部の農村では、遺伝子組み換えでは思うような成果が上がらないので、遺伝子組み換えをやめる農家が相次いでいる。自治体の補助金も縮小された。

村では遺伝子組み換え作物を食べ続けることへの不安も広がっている。

ある農家は次のように語る。

「遺伝子組み換えトウモロコシを開発した欧米の連中は、わたしたちのような貧しいところに送り、自分たちは絶対に食べないというじゃないか」

「遺伝子組み換えトウモロコシをやめて、昔から使ってきた種にしよう」

南アフリカ政府は国民の不安を解消するため、遺伝子組み換え食品に表示を義務づけた。今後も遺伝子組み換えトウモロコシを普及させていく方針だ。

農業国土省の政務次官は次のように語る。

「南アフリカの人口は毎年3%のスピードで増え続けていて、今や5000万にせまろうとしています。ですから、私たちはどんな手段を使ってでもトウモロコシの生産を増やさなければならないのです。」


日本では政府が安全性を確かめた上で遺伝子組み換え作物の栽培を認めているが、健康面での影響が本当にないのかどうか、周りの生態系を乱すことがないのかどうか、不安に感じる人もいる。

遺伝子組み換え作物を主食でも取り入れる動きは、日本でも無縁ではない。


香川県のさぬきうどん屋では、相次ぐ値上げがはじまっている。

さぬきうどんに使う小麦の大半がオーストラリア産。

その小麦がここ2年で7割近く値上がりしている。

さぬきうどん屋は「オーストラリアから入らなければ他から輸入すればいい」というわけにはいかないくらいオーストラリアに依存している。


オーストラリアでは異常気象のせいで5年以上も干ばつが続き、小麦の収穫量が半分に落ち込んだ。

これが世界の小麦高騰を招いた。

これまでオーストラリア政府は遺伝子組み換え技術の導入に慎重だったが、とうとう遺伝子組み換え技術による小麦の開発に踏み出した。干ばつに強い小麦の生産を開発している。


日本は海外の穀物に頼っているので、やがて、パンやうどんなどに大々的に遺伝子組み換え技術の作物が使われる時が来るかもしれない。

日本でも、茨城県つくば市の「農業生物資源研究所」などで遺伝子組み換えの技術が研究されている。除草剤に強い大豆や雨が少なくても育つ稲などを研究している。

しかし、決して、遺伝子組み換え技術は万能ではない。土地に合った種を作って普及するまでには10年、20年という長い年月が必要になる。また、それを消費者が受け入れるかどうか分からないので壁は大きい。


日本は輸入に頼っているから食糧危機に弱い。

G8の穀物自給率は次のようになっている。

カナダ:146%
アメリカ:132%
横で白・青・赤:99%
縦で左から青・白・赤:173%
イギリス:99%
ドイツ:101%
縦で左から緑・白・赤:73%
日本:28%

日本は穀物の自給率が先進国で圧倒的に低くなっている。

そこで、自給率を上げようとあらためて注目されているのが「お米の力」。

稲は日本の気候に合うので、日本はお米はたくさんとれる。

そのお米の潜在的な力「ライスパワー」を、食糧危機の解決に結びつけようという動きがいま始まっている。

米粉でパンやラーメン、うどん、パスタ、ケーキを作るといった、お米の新たな活用法がある。

味は小麦で作ったものと変わらない。

お米を小麦粉のように細かくする技術が開発されてから、可能性が広がり、2008年から次々と商品が生まれている。

ところが、日本の田んぼの4割は「減反」といって米作りを休んでいる状態にある。

休んでいる田んぼを全て使って米粉を作れば、小麦の輸入量にも匹敵する量になる。ライスパワーは大変な可能性を秘めている。

食用のお米だけではなく、輸入トウモロコシに頼っている家畜飼料にも、このライスパワーを生かそうとする動きが始まっている。

家畜のエサとなる飼料米は、食用に比べて収穫量が多い。農家曰わく、一般の主食米の倍近く収穫できる。

減反によって食用のコメを作ることが制限されているので、減反の対象にはならない家畜のエサになる飼料米を休耕田で作っている。

今までは飼料米は値段が高いと敬遠されていたが、穀物高騰で輸入トウモロコシなどとの値段差がなくなり、利用する養鶏場などが増えた。


家畜のエサの大半を輸入トウモロコシに頼る日本。

穀物の国際相場の値動きが牛肉や牛乳、卵の値段に直結する。

東京農業大学の信岡誠司教授は、飼料米の栽培が広がれば、家畜のエサの大半が自給できると考えている。

信岡誠司教授の試算では、日本の水田の面積は270万ヘクタール。そのうち、100万ヘクタールが現在、休耕田になっている。すべての休耕田で飼料米を作れば、エサ用トウモロコシの輸入は必要なくなるという計算となる。

信岡誠司教授は次のように語る。

「今までアメリカからトウモロコシを買っていますが、450億円もアメリカに払っているわけです。それを、日本国内で循環できるわけです。これは経済的な大きな意味があります。」

国も飼料米の増産に力を入れ始めている。つくば市にある作物研究所では、100種類もの飼料米が栽培されている。

食糧危機の中で水田の4割が休耕田になっている日本。

飼料米や米粉などの「ライスパワー」が日本の食糧の未来を切り開くと期待されている。


農林水産省の推計によると、日本の食べ残し食品は年間900万トン。これは、世界の食糧援助量(年間590万トン)の1.5倍。

食事にすると、160億食分が捨てられている計算。

日本は食糧の6割を輸入に頼る一方で、大量の食品を捨てている。。。


【感想】

ライスパワーってすごいですね。

小麦の代わりになる「米粉」。

輸入トウモロコシの代わりになる「飼料米」。

これらは、国レベルで支援する一大事業にするべきだと思います。

税金の投入も必要でしょう。そのためには、今ムダに使われている官僚に支払っている資金です。

中央が権力を握る官僚制はやめ、道州制を採用し、官僚に使っているムダなお金をライスパワーに回すべきだと思います。

あとは、日本の大量の食品廃棄も問題です。

日本の食品に記載されている賞味期限はかなり短めに設定されています。

というのも、食品メーカーは賞味期限が切れた食品に関しては、クレームがきても言い訳ができるからです。

食品メーカーとしては、食べられようと食べられずに捨てられようと、売れれば利益が出ます。

そして、クレームや問題が起こらなければ、事業を安定的に継続できます。

しかし、この短めに設定されている賞味期限のせいで、食糧廃棄が増えています。

どんなに国内での食糧自給率が増えても、食糧廃棄が減らなければ、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。

生産を増やすことだけに目を向けるのではなく、生産した食糧の廃棄を減らすという視点も重要視するべきことだと思います。

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