アメリカの穀物の売り込み戦略 世界の食がアメリカ頼みになるまで
(2008-10-18)




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アメリカの穀物の売り込みは戦後、世界各国に広まっていった。

アメリカはどのように輸出する国を増やしていったのか?

そして、それを受け入れる国はどのようにアメリカの穀物に頼るようになったのか?

そこで、重要な役割を果たしていたのが日本だった。

アメリカ中西部のコーンベルト。

世界に輸出されるトウモロコシの半分以上をアメリカが占めている。

大型機械の導入と品種改良によって、農場の生産量はこの50年で30倍に増えた。

しかし、生産が増えすぎると、穀物はだぼつき値段が下がってしまう。

アメリカの農家はこの50年、穀物の安さに苦しみながら、自ら売り先を開拓してきた。

ある農家は次のように語る。

「長年、作っても作ってもほとんど利益が出ない厳しい経営が続いてきました。そもそも、わたしたちが作る穀物はアメリカ国内だけでは使い切れないんです。利益を出すには国外に目を向けるしかありませんでした。」


1950年代、アイオワ州の農家は穀物の売り先を確保するため、政府への働きかけをはじめた。

1954年、アイゼンハワー大統領は「余剰農産物処理法」を制定し、余った穀物の輸出を支援する体制を整えた。

その5年後の1959年、アイオワの農家が最初に売り込みに成功したのが日本だった。

日本は伊勢湾台風によって農家が大きな被害を受けていた。

アイオワの農家は空軍の協力を得て、支援物資を日本に送った。

積み荷は種豚36頭。「豚空輸作戦」と呼ばれた。

豚と一緒に1500トンのトウモロコシを送った。トウモロコシを作った畜産を広めるのが狙い。

アイオワ州トウモロコシ生産者協会のある女性は当時を振り返りながら、次のように語る。

「豚空輸作戦がすべてのはじまりでした。ものすごい変化を起こすことができました。だって、それまで日本ではほとんどトウモロコシはつかわれていなかったんですよ。」

山梨県の畜産試験場では、当時運ばれた豚の15代目が飼育されている。


それまで、残飯などをエサに使っていた日本の農家。

トウモロコシを食べさせてみると、生育期間が二ヶ月短縮できた。

その後、トウモロコシをエサに使う養豚は、瞬く間に全国に広まった。

36頭の種豚は10年後には7万頭にまで増えた。


1960年代に入ると、日本はさらにアメリカの安い穀物を受け入れ、世界最大の穀物輸入国になっていった。

かつて、小麦の生産量全国1位、2位をあらそった群馬県では、1960〜1970年の間に農家が小麦の生産を次々とやめていった。

その理由は、学校給食によってパン食が普及すると、アメリカ産の小麦が大量に輸入されるようになり、安いアメリカ産に押されてしまったから。

牛のエサとして使っていた麦わらがなくなったので、安いアメリカ産のトウモロコシをエサとして使うようになった。

1960年当時、80%近かった日本の食糧自給率は、10年で60%に落ち込んだ。


1980年代、アメリカの農家の団体は世界50カ国に売り込み先を開拓していった。

まず、手を付けたのがエジプト。

首都カイロに事務所(アメリカ穀物協会エジプト事務所)を開き、食生活の向上を目指すエジプトの求めに応じて、家畜の飼育法を指導した。

アメリカ穀物協会のCEOは次のように語る。

「わたしたちは日本でめざましい成功を収めたので、その手法を多くの国で実践していくことにしました。わたしたちは世界中に種を蒔いたんです。つまり、我が国の農業に利益をもたらす新しいお客さんを育てていったのです。」

エジプトでは、アメリカ政府も支援して、各地に大規模な養鶏場を建設。

さらに、農家が飼っていた水牛にも注目した。

乳が出ないために処分されていた雄の仔牛をトウモロコシで太らせ食肉として出荷すると、エジプトでは牛肉の消費が増えた。

アメリカ穀物協会のCEOは次のように語る。

「私は当時、水牛作戦を率いていましたが、農業がめざましく発展していくのを目の当たりにしました。こうして、アメリカの穀物を買ってくれる客を増やし、世界的な産業に成長させていったのです。」


1980年代後半になると、アメリカは別の形で食のグローバル化を進める。

アメリカ政府は「貿易自由化」を世界に拡大した。

「貿易自由化」を強力に後押ししたのも農家だった。

「貿易自由化」の背景には、アメリカのトウモロコシの生産量がさらに増え、在庫が膨らんでいたという事情があった。

アメリカのある農家は次のように語る。

「政府に任せていてはダメなんです。自分たちに有利な状況を作りたかったら、農家は自ら組織を動員し、政策に対して影響力を行使しなくてはならないのです。」


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